Paradise Found

好きな音楽関連の英語和訳や諸々です。My Japanese translations (from English) and various things related to my favorite music.

John Myung 寄稿和訳 2016年3月 Guitar.com ベース演奏のための助言TOP 10

初出:2016年4月 別ブログで投稿

 

My Japanese translation of the John Myung article.

Bassist for Dream Theater (website). He has no personal official internet platform.

The original English article: Guitar.com, March 4th 2016

 

ジョン・マイアング John Myung 寄稿の和訳です。

ドリームシアター Dream Theaterサイト)ベーシスト。個人の公式インターネット発信拠点はなし。

原文:Guitar.comで2016年3月4日公開

 

ジョン・マイアングのベース演奏のための助言TOP 10

 

Dream Theater のベース達人が、より良いプレイヤーになるための知恵をシェア。

 

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(写真:原文ページより。撮影者さん不明)

 

1. ウォームアップ

 

ウォームアップはすべてのミュージシャンがやるべきことで、ベースを演奏するための身体の維持に直接関わることなんだ。腱を傷めてしまったりとか演奏しすぎによるマイナスの副産物で苦しむのを避けるためには、ウォームアップすることは本当に大事だよ。練習を始めるときには、ただゆっくり弾いて、しばらくはゆっくり弾くようにしてみて。少なくとも20分から1時間は。何を弾いているとしても、ゆっくり弾いて、そこから築き上げていくんだ。

 

楽器の演奏とは身体を動かすことであって、急に動かすべきではない筋肉も参加しているということを僕たちは忘れがちなんだよね。どんなアスリートでも常にウォームアップするのが最善だし、演奏には確実に運動との関連性がある。本格的に弾き始める前に全力でゆっくり慎重に弾いて。

 

体を傷める結果になるのは、急いで演奏してしまうときだけだよ。僕がよくやるウォームアップは、ただシンプルなパターンを弾いて半音ずつ上げながらネックのいちばん上まで行って、下げながら戻って来る、というやつだよ。クールなフレーズを思いつかなければ、ただスケールを弾いたらいい。充分クールだよ!

 

2. フレットボードからの視覚情報を助けにしよう

 

ベースのフレットボードは目で見たときにすごく理路整然としたもので、ベースという楽器を学ぶために本当に助けになるパーツだよ。フレットボードの上でいろんなことが形で示されるから、それが本当に助けになるんだ。

 

スケールを学んでいる途中で、弾いてどんな音がするか実際に知らないうちは、フレットボード上の音の構成を覚えたときにだけ、スケールを正しく弾いているとわかる。固有のパターンや型、言い換えれば「スケールの型」を、フレットボードを見たらわかるようになろう。 

 

そういう型を学べば、あとはブロックを積み上げるみたいに楽になり、そこから音の場所を体が覚えて行く先がわかるようになり、フレットボード上でどういうふうに動けば全部の音がつながっていくのかわかるようになる。加えて、そうやって弾きながら、ハーモニー(キーやコード)が展開していくのも聞くことになる。学校でやる基礎的な学習法の延長みたいなものだよ。

 

3. 練習のために自律し続けよう

 

きみの楽器に関連したことをする時間を毎日3時間確保できれば、演奏したときにそれが役立っているとしっかり感じるよ。音楽や歌の一部を覚えるのでもいいし、スケールを勉強したり、他のアプローチでもいいし、他の人の考えを読むのでもいいわけだよ……(訳注:このマイアング氏自身の記事のことを指して冗談を言っていると思われます!)とにかく、そのまとまった3時間を毎日確保すれば、本当に利益をもたらしてくれるよ。

 

毎日3時間だけ捧げれば、1週間のうち1日つぶして朝から晩まで練習するのと、ほぼ同じだよ。その時間配分をするように自律するだけでも、音楽的な思考力が発達して、自分が得ている結果と照らし合わせて、練習面で今すべきことは何か自然にわかるようになる。

 

何かをして、その効果がうまく出ているとか出ていないとか、ある程度時間がたつとわかるようになるよ。時間配分をするように自律することは、生死を分ける重大な要素だよ。きみの人生において、音楽とそれ以外とのバランスを保つためのすべてはそこにかかっているから。

 

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(写真:原文ページより。撮影者さん不明)

 

4. やる気と強い意志を持って……1日のうち早い時間に練習しよう※

 

(※訳注:原文によるとマイアング氏は自分の場合は早い時間にやるという話をしていて、万人に早い時間にやらなければだめと言っているわけではないように思います。この見出しはウェブサイト掲載時に付けられたと思われます。)

 

すごく強い意志を持つことが必要になる。ここは本当に大事なところだよ。それほどまとまった時間(1日3時間)を固守するには、強い意思を持たないといけないし、こうあるべきと思う通りに事が運んでいないときにも、強い意思を持たないといけない。自分の経験からして、そうするのはすごく大変なことだと思う。特に本当に忙しいときには。

 

ベストな方法は、僕としては、1日のうち早い時間に始めて、午後の早い時間までには「もうやった」と言えるようにすること。練習よりも生活自体のほうを優勢にできれば、きみはもう練習面でのゴールに到達している。そして、これがいちばん大事なことなんだ。そして、そうなってから、自分が練習しているものについて、クリエイティブになるとか、基礎の上に更に築き上げていくという話になるんだ。

 

楽器のクールなところのひとつは、生涯を通して演奏を学んでいくところだね。ここで終わり、ということがないし、常に何か進展することがあるし、常に挑む感覚がある。

 

楽器を演奏するにあたって、真髄を学びたいという気持ちを自ら起こす方法を見つけることは、本当に重大なポイントだ。本当にきみの後押しをしてくれるのは、究極的には、演奏したいという欲求だけだから。時には、それがないこともある。そして、そこが自律の出番だ。

 

5. 目標になる人、あんな風になりたいというヒーローを見つけよう

 

特にベース演奏を始めたばかりの頃には、上達したり可能性を広げたりするために大事なことだよ。僕はRushのゲディ・リー Geddy Lee、Yes のクリス・スクワイア Chris Squire、Iron Maiden のスティーヴ・ハリス Steve Harris が本当に大好きだった。この3バンドの音楽から本当に僕の基盤ができたし、Yesのハーモニーや挑戦的なアレンジと、Iron Maidenのメタル的なエッジを融合させようと努力したんだ。

 

そして、Rushの独特なケミストリーや、聴いていて本当に面白い曲を書く能力も加えようと努力した。僕がベース演奏を始めたとき、この3バンドが本当に原動力になったんだ。彼らのレコードに合わせて演奏していて、バンドの一員でありたいとすごく思うようになったんだ。

 

(訳者補足:マイアング氏は MusicPlayers.comのインタヴュー(和訳)で、ベースを始めたきっかけを語っています。少年時代に最初はヴァイオリンを演奏。近所の友人からバンドに誘われ、始めはヴァイオリンをやろうとしたがしっくりこず、ベースを勧められて弾いてみたところ魅了される。

そこから本格的にベースを学んでいくに当たって、上記で挙げているヒーローたちが原動力になった、ということだと思われます。)

 

でも、クラシックやジャズのミュージシャンたちの研究もしたし、その修練法、音楽の構成センス、演奏法は、また別の大きな情報源になっていたよ。僕のやるべきことは、こうしたすばらしい情報源に気付き、そこから要素を引き出して、僕にできる限り自分の演奏に活かすにはどうしたらいいか組み立てていくことだ。演奏技術を発展させるためには、やらなきゃいけないことだよ。

 

6. スケールを弾くだけが演奏ではない:曲を覚えてジャムろう

 

他の人の曲を覚えたり、他のベースプレイヤーのグルーヴを学んだりすることは、きみ自身の楽器演奏能力を伸ばすために正当な方法だよ。好きな音楽、聴いている音楽は、いつでもきみの周りにあってリアルタイム更新の図書館のようなものだ。僕が演奏を始めたときは、レコードに合わせて弾きながら覚えることに熱中していて、それから、一緒に演奏していたみんなと、覚えた曲を基盤にしてジャムっていたよ。

 

僕と(Dream Theater ギタリストの)ジョン・ペトルーシ John Petrucci は、自分たち自身の個性やサウンドを探求することにもなっているという意識もないまま、カバーを演奏したり、曲を覚えたりジャムったりしていた。僕たちのコントロール下にはないところで個性やサウンドができていっていたんだ。自分たちの個性やサウンドができた結果、真剣に活動するバンドを組み、この人生をかけた大冒険に乗り出すことになり、今ではその大冒険をしている年月のほうが、僕の音楽キャリアの大部分を占めるようになった。

 

本当に特殊なシチュエーションが僕の人生の大部分を占めるようになったわけだけど、すべては、好きな音楽の演奏法を学び、好みや考えの合うミュージシャンたちや友達と分かち合うことから始まったんだ。

 

7. チームプレイヤーになる方法を学ぼう

 

きみの初めてのバンドであっても、2度目であっても、25度目であっても、集団に参加して演奏するということは、個人が集まった中にきみも深く関わっていくということであって、そのゴールは有意義な音楽を創造することだ。有意義な音楽というのは、全員がお互いを尊重し、全員がそれぞれのパートで可能な限りベストな音楽を作ろうとしたときにできる。それに気付くのは大事なことだ。

 

つまり、チームプレイヤーになる方法を学ぶのが重要ということなんだ。どんなシチュエーションでもよくある問題というか事態のひとつは、自分が本当に好きな曲もあるだろうし、それほど好きではない曲もあるだろう、ということ。後者に対する解決法は、気に入り度が最も低い曲でも情熱を持って演奏する方法を見つけること。

 

 そして、問題の根源をどこかに探すときは、自分自身から始めること。その曲を間違った方法や間違ったアプローチで演奏しているかもしれない。だから自分のアプローチを変えれば、その曲の演奏をもっと良くできるかもしれないし、その曲の良さがもっとわかるようになるかもしれない。

 

8. バンドメイトとの交流にポジティブでいよう

 

バンドの他のメンバーたちとうまくやっていく、または少なくともうまくやっていこうとする努力は、見落とされがちなことのひとつなんだ。
もし、きみが個性ある個人の集団に参加していて、その全員がすばらしい能力の持ち主だけど本当に真剣なレベルでバンドに取り組んでいない、という場合、そのバンドが長続きすると僕は思わないし、きみは本当に特別なものを手に入れそこなってしまう。

 

人間関係の緊迫は起きるだろうし、バンドが長続きするか疑わしくなることもあるだろう。ミュージシャンであるということは、本当に多くを要求されることだし、知らなければならないことの多くは、言葉で説明してもらったり教えてもらったりできない。その状況に足りないものを補い、集団の中で活動に取り組み、一緒にクリエイティブであろうとしている人たちの考えや意見を聞く方法を学ぶことは、生死を分けるほどに重要なことだ。

 

そこで、きみが個人としてどんな人間であるかが、状況に対して大事な資源になる。知っていることは全部動員して、できることは全部やるんだ。せがむ、借りる、盗む。状況を可能な限り良くするために。きみが作っている音楽にやりがいを感じているときには特に。

 

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(写真:原文ページより。撮影者さん不明)

 

9. 初めて真剣に弾くベースは弾き心地が良く、万能なものであるべし

 

自分の手に合っていて心地良い楽器で演奏するように心掛けないといけない。プロフェッショナルな観点から見て有能で役立つものに惹かれて使うのもクールだと思う。言い替えれば、万能なもの、ということだね。スタジオワークをしなければいけないとき、楽器は全員を、エンジニアを、バンドのみんなを、ずっと幸せにしておけるものである必要がある。それから、曲作りに使えるようなクールで質の良い音を簡単に出せるものである必要もある。

 

僕は品質に折り紙つきのベースに、より惹かれる傾向がある。たくさんのいろいろなベースを演奏してきたけど、僕はその気になると、ベース改良の努力をするというより、いちから作ってきた!きみのために本当によく役立ってくれるベースを選ぶんだ。僕は一流の楽器、つまり実績のある、さまざまなシチュエーションでグルーヴしてきた歴史のあるベースに価値を見いだす傾向がある。でも、具体的には、きみの演奏スタイルに本当にフィットする、きみの手と相性のいいベースを見つけ、持ったときどれだけ体にしっくりなじむかとか、そういうことを確認しよう。

 

10. もうたくさんと思ったら、また明日

 

自分の演奏にひどくへこんでいたり、練習室で調子の悪い1日を送っていたりしても、壁に頭を打ちつけるようなことをしていてはいけない。そんなことをしていても、きみ自身でよく考えて設定したゴールに決して到達できないし、ただフラストレーションがたまるだけに終わってしまう。

 

誰にでも物事がうまく行かない日はあるし、それがきみのベース演奏に訪れていると気付くのは大事なことだ。僕なら散歩に出かけてしまうし、頭をすっきりさせて次の日にまた練習するといいよ。大事なのはその日だけじゃなくて、次の日に起きてまたベースを手にできることなんだ。

 

ベース練習の目的は、ベース演奏や音楽作りに対して気が滅入るほどのフラストレーションをきみ自身に与えることじゃない。「こんなこと、もうしたくない」と自分に語りかけるところまで行くんじゃなくて、「さて、ちょっと離れてみよう」となるほうがいい。時と場所を変えて、ちょっと離れて、それから新鮮な気持ちで戻ってくるんだ。他の日に比べて、もっと良くなる日もあるよ。