Paradise Found

好きな音楽関連の英語和訳や諸々です。My Japanese translations (from English) and various things related to my favorite music.

Mike Mangini インタヴュー和訳 2011年7月 RHYTHM 2011年7月号

初出:2011年12月 別ブログで投稿

 

【背景情報】

 

ドリームシアター Dream Theaterサイト)創立メンバーでありドラマーのマイク・ポートノイ Mike Portnoy が2010年9月8日、脱退を発表。

 

Dream Theaterはバンド再建のため、凄腕ドラマー7人を集め2010年10月に新ドラマーオーディションを実施。

その模様をドキュメンタリー映像に収録し2011年4月YouTubeで公開。

 

Episode 1 動画 :マイク・マンジーニ Mike Mangini

Episode 2 動画 :デレク・ロディ Derek Roddy、トーマス・ラング Thomas Lang、ヴァージル・ドナティ Virgil Donati、マルコ・ミネマン Marco Minnemann

Episode 3 動画 :アキレス・プリースター Aquiles Priester、ピーター・ウィルドアー Peter Wildoer、合格発表

 

日本語字幕付きの映像がアルバム "A Dramatic Turn Of Events" スペシャル・エディション日本盤(2011年9月発売)(amazon)付属DVDに収録されています。

 

上記YouTubeやDVDではカットされているマイク・マンジーニとのジャム演奏の映像を収録したUSBがアルバム "Dream Theater" ボックスセット(2013年9月発売)(amazon)に付属しています。

 

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My Japanese translation of the Mike Mangini (website) interview.

The original English interview:  "RHYTHM" July 2011 issue (This issue is not in stock at their website.)

I bought a copy when it was published in 2011.

Interviewer: Joel McIver

  

マイク・マンジーニ Mike Mangini(サイト)インタヴューの和訳です。

原文:イギリスのドラム誌 "RHYTHM" 2011年7月号(同誌サイトで在庫なし)

訳者は2011年の発売時に1冊購入しました。

インタヴュアー:Joel McIver

 

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(P30,31の見開き)

 

MIKE MANGINI DREAM THEATER

 

世界でも最も競争率が激しいであろうドラマーの座をかけたオーディションが終わった。Dream Theaterのマイク・マンジーニが、伝説的ドラマーの座を受け継ぐことについてジョエル・マクアイヴァー Joel McIver に語った……

 

(P33)

 

Dream Theaterには何事も中途半端ということがない。創立メンバーの1人であり、ドラムの神、マイク・ポートノイが20年あまりもの活動ののちバンドを去ると決めたとき、この地球最大のプログレメタルバンドは、彼の後継者を見つけることなどほぼ不可能と覚悟した。実際のところ、いくつもの受賞経験のある彼のようにスティックを操ることのできるプレイヤーが何人いるだろうか?シンガーのジェイムズ・ラブリエ James LaBrie、ギタリストのジョン・ペトルーシ John Petrucci、ベーシストのジョン・マイアング John Myung、キーボーディストのジョーダン・ルーデス Jordan Rudess から成るバンドは、撮影班を雇い、業界で最も経験豊富な7人のドラマーを集め、トップ・シークレット扱いのオーディションをおこない2010年の残りほとんどを費やして、その過程をドキュメンタリーとして伝える準備を整えた……。

 

そして、メタル界が息をひそめて待つ中、その年の終盤に決定を下した。それでもまだ、どうなっているのか我々に教えてはくれなかったが。ポートノイはいくつかの新プロジェクトを開始する一方、DT関係者からのニュースは乏しく、最小限、という状況だった。5ヶ月後、Dream Theaterはついに沈黙を破り、新ドラマーはマイク・マンジーニだと発表した。

 

アナイアレイター Annihilator、エクストリーム Extreme、スティーヴ・ヴァイ Steve Vai のバンドといった経歴を持つベテランで、WFD (World's Fastest Drummer) 認定の3つのドラムスピード世界記録保持者であり [単純に驚くばかりの証拠をYouTubeでご覧あれ](動画バークリー音楽大学のドラム教師を務めたこともあり、ジェイムズ・ラブリエ(訳注:ソロアルバム1作目 "Keep It To Yourself"(1999年)、2作目 "Mullmuzzler 2"(2001年)、3作目 "Elements of Persuation"(2005年)のドラムでマンジーニ氏が参加)や他のミュージシャンたちと共演経験のあるセッションの達人でもある。そうしてみると、Dream Theater向きの素質を大いに持つ男というわけだ。発表から数日のうちに、Rhythm誌はマサチューセッツ州クインシーにあるマンジーニ氏の自宅スタジオに招かれ、オーディションの過程についてとっておきの話を聞くことができた。彼がそのキットでやるようなタムのロールへの挑戦は滅多にするものではない。我々がやっても、きっと大変アホっぽく見えるだけという結果になるので……。

 

マクアイヴァー McIver:Rhythm誌より、Dream Theater加入おめでとうございます。近年まれに見る、夢のオーディションですよね。

 

マンジーニ:そうだよね。自分の両親にも先週やっと話したばかりなんだ。だから、経過を知らせなかったことについては、みんな仲間外れにされたなんて思わないでね!

 

マクアイヴァー:オーディションを受けられたのは2010年の後半でしたが、結果が公表されたのは2011年4月29日でした。その間ずっと黙っているというのは大変でしたか?

 

マンジーニ:めちゃくちゃ大変だったよ!(笑) 妻に話しただけなんだ。しかしまあ危ない橋を渡るような要素がいっぱいあったねえ。ファンに見せるため、とてもとても高額を投入した[ドキュメンタリー撮影の]プロジェクトが企画されたんだ。僕が今までの人生で見た中でいちばん太っ腹な企画だよ。それから僕も言葉を発しそうになる危機があった。秘密を守るという信頼に応えることができたので、僕は今、新しい家族に迎えられたんだ。12人かそれぐらいの人は僕がオーディションを受けることは知ってたから、2倍も3倍も余計に事が難しくなったよ。僕が急になんにも言わなくなったわけだからね!ネット上でファンの人たちが「業界内部の人はDream Theaterの新メンバーが誰なのか知ってるはずだ」と言ってる投稿をたくさん読んだよ。でも、真実はそうじゃなかったんだ。僕自身の家族も知らなかった。そうでなきゃいけなかったんだよ。さもないと秘密を漏らさずにいることはできなかっただろうからね。

 

マクアイヴァー:Dream Theaterからオーディションの話があったときすぐに承諾しましたか?

 

マンジーニ:迷わなかったよ!僕は懸命になって、いろんな面で人生への挑戦をしてたんだけど、このオーディションは全部の突破口だということがこの話が来たとき最初に頭に浮かんだんだ。本当にこのボールをつかみたいと思ったよ。まるでサッカーの試合でベンチにいてフィールドに出たいと思ってるときみたいにね。誰もがボールにさわりたいと思ってる中でね。

 

マクアイヴァー:7人のドラマーがDream Theaterのオーディションに挑戦しました。あなたのオーディションについてお聞かせください。

 

マンジーニ:僕のオーディションは1番目だった。まず思ったのは「American Idol(訳注:TVの歌手オーディション番組)で最初にオーディションを受ける人は忘れられる!」だったね。僕のオーディションは(2010年)10月18日だった。オーディションを受ける全員が3週間前に連絡を受けたんだ。

場所はニューヨーク市のSIRスタジオ。僕の家からは電車で4時間ぐらいの旅だよ。バンドの全員がスタジオにいて、何人かのスタッフやDream Theaterのマネージャーや、撮影班もいたよ。

オーディションを受ける全員が、課題の3曲をEメールで知らされてたんだ。で、Dream Theaterの場合、3曲ということは30分ということだよ!"A Nightmare To Remember" と "The Spirit Carries On" と "The Dance Of Eternity"。

 

マクアイヴァー:新ドラマーの座を争う他の6人の候補者が誰かということはどうやってわかったんですか?

 

マンジーニ:課題曲をEメールで送られたとき、グループ送信になってて全員宛先に入ってた!(笑)6人みんなをとても尊敬してるよ。でもこのオーディションについてはそんなにコミュニケーションを取ってはいないね。マルコ・ミネマンとは話したけど。僕たちは2010年に一緒にツアーに出てドラムを叩いたばかりだったからね。

(訳注:エディ・ジョブソン Eddie Jobson 主催 Ultimate Zero Project に参加。ツアーで来日の際にマンジーニ氏とミネマン氏の2人でインタヴューを受け表紙を飾った "Rhythm & Drums magazine" 2010年8月号(出版元リットーミュージックでの紹介 在庫はなし)がDream Theaterオーディションのドキュメンタリー映像に登場)

でも話したと言ってもごく短くて、友人としてちょっとしゃべった程度だけどね。

 

マクアイヴァー:オーディションではどのようなキットで演奏しましたか?

 

マンジーニ:そこにあったものを使っただけなんだ。レンタルのキットだったよ。でも僕はジルジャン Zildjianと契約していて、用意をしてもらえたのでシンバルはいつも通りのセットアップだったよ。オーディションの一番手というのは不利なことがたくさんで、道具を全部セットしなきゃいけないのも、そのひとつだね。僕よりあとの人は全員、少なくともドラムがスタンドに取り付けられていて、ハードウェアも定位置にあるという状態で始められたわけだよ。

 

マクアイヴァー:では、すごくプレッシャーがありましたか?

 

マンジーニ:いや。なぜかと言うと、僕がいつもオーディションの準備をするときやることのひとつとして、既に会場にいるところを思い描いてたんだ。つまり曲を練習していてミスったら、バンドのみんなと会場にいてミスってるところを想像するわけだよ。そうしておくと、もう会場に入ってしまってからも気が楽になるんだ。だから、オーディションはかつてないぐらい楽しかったよ。ひとつだけ、演奏を始める前にウォームアップができなかったのは楽しくなかったけどね。ハードウェアを動かせなくて、ドラムキットの構成が僕が普段使ってるのと根本的に違ったから、ウォームアップはしておきたかったんだよね。

 

マクアイヴァー:どういう点が問題でしたか?

 

マンジーニ:僕のドラムセットはまったく世界の中でも独特で、タムの音程の配列が左から順に、または右から順になってるんじゃなくて、真ん中から両方の外側に向かっていくんだ。僕は右利きのプレイヤーなんだけどね。だから、そんな風に配列の違うセットでいきなり演奏しないといけなかったんだ。

 

それから「世界最速ドラマー」のYouTube動画が誤解のもとになって、批評家の人たちが、僕はドラムを強く叩かないと思ってるんだけど、実際は強く叩いていて、強く叩きすぎて、第一打目でシンバルの傾斜固定をゆるめてしまったんだ。ドラムフィルに入りながらも立ち上がって直さないといけなかった。そのことを除けば、他のことは全部楽しかったよ。

 

マクアイヴァー: オーディション中に、何かミスはありましたか?

 

マンジーニ:僕の耳に可能な限り、マイク・ポートノイのパートを拾ってぴったりその通りに演奏したよ。ちょっとした調整を除いてはね。詳しく言うと、演奏の展開がちょっと変わったときに合わせたり、オーケストラ的に他のミュージシャンたちの演奏に合わせたドラムフィルを入れたりね。たとえば、どの曲でも、ジョン・ペトルーシやジョーダン・ルーデスのソロの中で、その展開に合わせて僕の好きな手を加えたところがあったよ。ジェイムズ・ラブリエの歌に合わせてシンバルでアクセントをつけたところもあった。ジョン・マイアングにも同じようにしたよ。僕が覚えていた録音ヴァージョンと少し違うことを彼がしようとしていれば、しっかり見逃さなかったよ。彼をよく見るようにしていたから、彼の足の動きを見たらどうしようとしているか前もって察することができた。もしジョンが、ビートを刻むというよりも、意表をつくような演奏をしようとしていれば、すぐにそれに応えたよ。

 

(P34 写真の添付文)

マイク・マンジーニと、新しい Dream Theater のスタジオ用セットアップ、あるいは、写真に入れられた限りのその一部

 

マクアイヴァー:Dream Theaterの3曲を演奏したあとは、どうなりましたか?

 

マンジーニ:みんな座って、僕にいろんなことをたくさん質問してきたよ。僕がこのバンドでどういうことをしようとしているか、とか、どうしてオーディションを受けようと思ったのか、とか。僕はこのバンドのやる音楽が本当に大好きなだけじゃなく、彼らが自分たちに与えられた才能を存分に使っているところが大好きだということを、わかってもらえるように伝えたよ。今は言い換えてるけどね。そのときはとにかくしゃべり倒した。

 

でも基本的には、このバンドのみんなが「演奏の音が多すぎる」とかいう批評をものともせず、自分たちに与えられた才能を尊重して、その才能を使うことをためらわないところが、僕はすばらしいと思うってことを彼らに伝えたかったんだ。あと、今までのドラムパートやマイク・ポートノイが大好きだってことも伝えたかった。これはとても大事なことなんだ。

 

僕にはDream Theaterの前にも経歴があるし、2010年には2つのドラム誌で表紙に載ったりもしたから、まったく無名の状態から急に出てきたってわけじゃない。だけど、僕が純粋な尊敬の気持ちを持っていることを伝えるのは大事なことだと思ったんだ。

 

マクアイヴァー:では、あなたはポートノイのドラミングのファンなんですね。

 

マンジーニ:マイク・ポートノイがDTに残した財産を僕が守るということを世界のみんなに知っておいてもらいたいんだ。フリなんかじゃない。マイクとは15年も知り合いなんだ。一緒に過ごしたこともたくさんあるし、彼はいつだって僕に親切にしてくれたよ。DTのドラマーの座は、彼が自分を存分に表現するために作ったものだ。僕は確実にそれを尊重していくよ。本当に。大事なことなんだ。道徳的なレベルだけじゃなく、音楽的なレベルでもね。

 

マクアイヴァー:ご自分がオーディションに合格したということは、どのようにしてわかりましたか?

 

マンジーニ:僕が合格したと実際に教えてくれた最初の人は、ジェイムズ・ラブリエだったよ。バンド全員そろっての電話があったんだ。オーディションから2週間後にね。

 

マクアイヴァー:さぞストレスのたまる2週間だったでしょうね……。

 

マンジーニ:エクスクラメーションマーク27個つきで、イエス!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! バンドの全員が交替で、気持ちを僕に話してくれたよ。彼らが将来のことを思い描いて士気を上げている様子を聞くのはとてもすばらしいことだったよ。

 

マクアイヴァー:おそらくDream Theaterの皆さんは、ドラムの技術だけでなく人間的にも適性のある人を望んでいたのではないでしょうか?

 

マンジーニ:もちろん。僕だって、もしツアーバスで誰かから3フィート離れて寝なきゃいけなかったら、その人の人間性が心配になるもん!

 

マクアイヴァー:現在までのあなたの経歴についてお話を聞かせてください。

 

マンジーニ:ええと、1993年にAnnihilatorに参加したのが、僕の最初のメジャーシーンでの活動だよ。Underworld(訳注:イギリス、ロンドンのカムデンにあるライヴハウス)で演奏するためにロンドンに到着したときのことや、ロンドンのファンのために念入りにリハーサルをしてからステージに上がろうとしたときの感じは、忘れられないな。観客のみんなが叫んでるのがバックステージまで聞こえてきてたんだけど、それが何の音かわからずにいたんだ。あの場にいるためならお金を払っても良かったね。それぐらい楽しかったよ。

 

マクアイヴァー:1994年にはExtremeに参加されました。何か演奏スタイルに大きな変化はありましたか?

 

マンジーニ:演奏スタイルに変化はあまりなかったねえ。当時のメンバーでサウンドチェックのときに作った曲を、そのメンバーで演奏するのを世界のみんなが聴くことはないということが、僕の経歴の中でいちばん悲しいことのひとつだよ。Extremeの新しいアルバム(訳注:"Saudades De Rock" 2008年)に "Comfortably Dumb" という曲Spotifyがあるんだけど、僕がいた時代にできた曲なんだ。ああいう感じの曲がたくさん、僕のドラムビートから出てきてたんだよ。

 

そのあと、僕はスティーヴ・ヴァイと仕事をするためにロサンゼルスへ移った。

 

マクアイヴァー:楽しかったでしょうねえ。

 

マンジーニ:いやもう、天国だったよ。スティーヴ・ヴァイはドラマーにドラムパートを指示する人で、そういうのって好きじゃないドラマーもたくさんいるけど、僕は好きだったんだ。ティーヴが僕に挑戦するようなすばらしいアイディアを出してくるからね。彼は僕が普段と違う腕の動かし方をしなきゃいけないようなことをやれと言ってきて、僕はよく笑ったもんだよ。ある音であるシンバルを叩けと言うんだけど、そうしろというときには、僕は忙しい真っ最中だとか、腕がドラムセットの反対側にあるとかね。体を動かしてその指示に合わせるのは、僕にとっては挑戦で、それが大好きだったんだ。

 

マクアイヴァー:ご自分のドラミングスタイルを要約すると、どのように表現されますか?

 

マンジーニ:僕はオーケストラ的な訓練を受けたミュージシャンなんだけど、僕が情熱を注いでるのはプログレヘヴィメタルなんだ。僕のバンド経歴を見てよ!(笑)僕のスタイルはDream Theaterにフィットするよ。頻繁にコミュニケーションを取りながら特定のドラムやシンバルを叩くことにかけては、僕は非常な情熱を注いでるからね。僕はバンド全体がリフを演奏して展開して行ってる中で、ただドラムフィルを叩くだけ、ということはしない。僕もそのリフを演奏するんだ。できる限り音の通りに。伝統的なドラムセットだとできないことだけど、僕のドラムセットはそれができるんだよ。

 

マクアイヴァー:その独特なタムの配列には、どのようにして行きついたのですか?

 

マンジーニ:学校時代に、マーチングバンドのドラム隊で演奏してたからだね。僕はトリオタム(tri-tom)を演奏してたんだけど、それはつまり高い音程のドラムが中央にあって、真ん中の音程のドラムが自分の左側にあって、低い音程のドラムが自分の右側にあるということなんだ。もしケーブルハイハットの発明がなかったら、このドラムセット配列は実現できなかったよ!

 

(P36 写真(右)の添付文)

マイクはドラムキットにシンバルを148枚つけたとしても手が届くと考えている。

 

マクアイヴァー:ぴったりポートノイ氏のパート通りに演奏するようにしていますか?またはご自身の特徴を出していますか?

 

マンジーニ:もちろん自分の特徴を出していかないといけないけど、誰でも自然とそうなるよね。でも実際のところビートやフィルを大きく変えすぎてはいないよ。彼のパート通りに演奏してるよ。例外としては、彼は他のみんながどんな演奏をするかまだわからない状態でオリジナルのドラムパートを録音してるから、僕が他のメンバーのライヴ演奏に合わせて音に飾りをつけるときは、場合によって、14インチのタムの代わりに12インチのタムを選んだりするけどね。ドラムを先に録音するというのは僕もジェイムズ・ラブリエのアルバムでやったんだ。完成品を聴いたとき「わあ、こういう風になるとは知らなかった、これをやりたかった、あれもやりたかった!」てなったよ。ツアーでは録音版通りの演奏を聴くことになると思ってもらって大丈夫だよ。ほとんどの部分でそうするつもりだからね。

 

マクアイヴァー:バンド側から、ポートノイ氏のように演奏してほしい、またはほしくないという要望はありましたか?

 

マンジーニ:曲は曲、なんだよね。マイクの演奏に関することだけじゃなくてバンド総合のことなんだ。ある特定のタイミングでスネアが鳴るのにバンド全体が慣れ親しんでいれば、そこで鳴らす必要があるわけだよ。

 

マクアイヴァー:あなたのPearlキットの独特のバスドラム構成についてお聞かせください。

 

マンジーニ:自分から見て左側に26インチのバスドラムが1つ、中央に22インチが2つ、右側に18インチが1つ、いちばん外側の左と右に、左右それぞれの足で鳴らすエレクトリックドラムのトリガーとしてのものが1つずつ。ケーブルハイハットも2つあるから、ペダルは8つだね。

 

僕はこの何年もドラムセットの構成を考えてきたんだよ。どこで使うかもわからずにね!(笑)このキットでは左足を忙しく動かして演奏するんだ。基本のダブルキックパターンでない限り、2バスで同じ音を出すというのが好みではなくてね。それぞれで別のダイナミクスを出すのが好きなんだ。拍子のうちダウンビート(訳注:ダウンビート = 拍子の中でアクセントが置かれるビート。指揮の際、指揮棒や手を上から下へ動かすビートであることから)で26インチを鳴らして、それほど重要でない音のときには18インチにするとかね。大勢の人から「なんでそんなにたくさんバスドラムをつけてるの?」とか「1つだけでやれなきゃだめだろ……」とかなんとか言われるよ!

 

マクアイヴァー:そう言っていた人たちも、今となってはDream Theaterに入ったあなたに対してそう言う度胸はないでしょう。

 

マンジーニ:ハハ!お1人様1回まで!でもね、僕を知っている人たちは、僕が4ピースのキットで演奏するのも好きだってことを知ってるよ。いつかアコースティックセットでDream Theaterのライヴをやれたら面白いだろうな。僕はシンプルな、ハイハットが1つの4ピースのキットで演奏してね。とても楽しいだろうな。

 

マクアイヴァー:他には、あなたのキットには主にどのようなものがありますか?

 

マンジーニ:さっき言ったように中央から放射状に広がるラックタムがあって、僕のシグネイチャースネアも使ってるよ。上のほうにキャノンタムもある。下にはもう場所がないからね。このキットは、僕が自分にできることを完全に引き出すために必要だから、こういう風になってるんだ。音楽的な意味で、僕そのものだよ。僕はただキットを叩きまくる昔ながらのドラムフィルはやらない。または、いつもやるわけではない、と言うべきかな。とにかく、僕はこのキットでメロディラインを演奏するんだ。

 

マクアイヴァー:では、Dream Theaterの新アルバム(訳注:"A Dramatic Turn Of Events" 2011年9月発表)についてお聞かせください。特に難しかったドラムパートはありますか?

 

マンジーニ:何週間か前にドラムトラックを録音し終わったんだけど、あったよ!自分に聞こえる他の音を尊重しようと努めたんだけど、複数のことを一緒にやるために何時間も練習しないといけない動きがあったよ。素早く、強く、パワーとフィーリングを両立させてドラムを叩く動きに筋肉を慣れさせないといけなかった。単にドラムパートを覚えればいいという話じゃなくて、右手足でやるパートと左手足でやるパートを脳の中でミックスしないといけなかったんだ。

 

マクアイヴァー:新メンバーとして、ご自分の存在をアルバムで印象づけなければいけないと思いましたか?

 

マンジーニ:イエスでもあるしノーでもあるなあ。もちろん思ったけど、でも、いずれにしたってそうなるよね。作曲はまったくやらなかったんだ。あの4人だけでどういうものが生まれるのか見たかったから。かつていたマイクがいなくなってどういうことになるかという話だけじゃなくて、これから僕がいてどうすればいいかという話でもある。まったくドラマーがいなかったら彼らがどういう曲を作るのか見たかったし、彼らも4人で曲を書きたかったんだ。ジョン・ペトルーシがそうしたいと僕に伝えてきたときに同意したよ。特に、ドラムキットの新しいパーツを手に入れるという他の仕事がたくさんあったからね。5,000とか6,000ポンド(訳注:約2t 268kg~2t 722kg)ぐらいのドラム装備を、3階分の階段を上ったり下りたりして移動させないといけなくてね。新しい装備を受け取って、古いセットを分解して新しいセットをまた1からまるごと組む必要があったんだ。アルバム用のキットを準備していて、ひとつのキットにまとめて同じ部屋に収め、スタジオ用のキットも新しいものに変えたんだ。

 

マクアイヴァー:あの手足の世界記録を出したときと同じドラミングスピードを今も保っていますか?

 

マンジーニ:うん。あのスピード記録を出すための練習というのは全然してなかったんだけどね。現場ではただウォームアップをしただけで。そういう練習は10代の頃にやったよ。正直なところ、朝起きてベッドから出てすぐに手で1秒に20ビートを10秒間叩けるよ。筋肉がその動きを記憶していて忘れないんだ。

足となると話が別だけどね。足の練習を正しい方法でやっていなかった上に、膝に怪我を抱えていたんだ。半月板に裂け目が入っているという怪我で、通常のそういう怪我よりも状態が悪くて回復には3倍も時間がかかってしまった。とても小さな子供が2人家にいたこともあって、諸々の都合上、リハビリに行けなかったことが何度もあったし。2009年に手術を受けたあとは1分に100ビートしか鳴らせなかった。その年の5月にはクリニックツアーがあって準備をしないといけなかったんだけど、その時点でまだ1分200ビート以下だった。でも時間を取って練習したから、今ではとても調子がいいよ。

 

(P40 写真右下)

 

「マイクの変拍子ガイド」

 

1 ポリリズムとは何かを知るべし。少なくとも2つ以上のパターンが同時に進行してできるものである

 

2 手足のひとつを使って音を演奏しながら、声を出して拍子を数えるべし

 

3 視覚など、他の感覚も使うべし。たとえば8打のパラディドルなどの音の集団を演奏する手順を、目でも覚えるべし

 

(訳注:パラディドル Paradiddle = PAS (the Percussive Arts Society 打楽器芸術協会)(サイト)がまとめた "International Drum Rudiments"「国際ドラムルーディメンツ」(PASサイトでの記載)のひとつ。ルーディメンツ Rudiments = スネアドラム、小太鼓の基本奏法。

 

上記で言及されているのは、その中の16. シングルパラディドル Single Paradiddle 1拍の間に4打で、2拍で1セットなので、合計8打。

 

「パラ」 = シングルストローク = 1打で1音を鳴らす

「ディドル」 = ダブルストローク = 1打で2音を鳴らす。スティックをあまり強く握らず、1音目を打ったスティックがはね返ってまた落ちる動きを利用して、もう1音鳴らす。)

 

4 トリプレット(三連音)ばかりやるべからず。トリプレットはみんな知っている。すなわち、もっと野望を抱いて難しい数をやってみるべし。トリプレットとは感じるものである。数えるものではない!

 

5 19音から始めるべし。10まで数え、次に9まで数えるべし。そうすると、自分の内部の拍子感覚がいやでも開発される

 

 

マクアイヴァー:High Voltageのような、この夏のライヴはどのようなものになるでしょうか?

 

(訳注:Dream Theaterは2011年7月4日から、マイク・マンジーニ加入後初のツアーを開始。まずはヨーロッパ中心のコースを回り、数ヶ国で夏フェスに参加。High Voltage Festival 2011 はロンドンのヴィクトリアパークで2011年7月23日(土)・24日(日)開催。Dream Theaterは24日にメインステージのトリとして出演)

 

マンジーニ:間違いなく情熱のこもったものになるよ。僕もその一部になりたい。僕のキットの音を聞いてもらいたい。部族の一員になれるようにね。雰囲気を分かち合いたいし、今まで僕を見たことがない人たちを満足させたい。何が起こっても大丈夫。楽しむよ!